ショコラ~愛することが出来ない女~

 ピシっと背筋を伸ばして返事をした森宮ちゃんは、その後の仕事中はこの話を一切持ち出さなかった。

いい子だわ。ホントに。

こういう子なら、きっと隆二くんも好きになってしまうだろう。
私にはもう無理なのだとしたら、彼女みたいな人が相手の方が諦めやすくて救われる。


 一度外出してから会社に戻り残った仕事を片付ける。

時刻は7時5分前。
意地でも終わらせてやるわ。

資料を纏め上げ、一部だけプリントアウトする。
確認は家でやろう。

パソコンの電源を落として、森宮ちゃんを見ると、彼女も同じような動作をしていた。
思わず顔を見合わせて笑ってしまう。


「行きましょうか。近くの美味しい店知ってますよ?」

「じゃあ今日は森宮ちゃんセレクトに任せようかしらね」


勢い良く会社を飛び出すと少しだけ軽くなった気分だ。

女同士もたまにはいいわね、なんて思う。


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