ショコラ~愛することが出来ない女~
「……康子、さ」
「オナカすいてるのよ」
目の前にあるのは、折角綺麗に飾りつけたのに指が突っ込まれて、台無しになってしまった哀れなケーキ。
私はそれのクリームを今度は自分の指ですくって彼の口元に押し当てる。
「いいの?」
「うん。でも、割り切ってよ?」
ケーキは、そのまま冷蔵庫にサヨウナラ。
私と彼は、店の二階にある和室へとなだれ込む。
そこはクリスマスなど大量にケーキを作る時や、店でやりたい仕事が立て込んでる時に隆二くんが泊まり込むために作ってある一室だ。
「ちょっと待ってて」
そう言って、布団を押し入れから出してくる。
詩子に話すときと私に話す時では若干口調が違う気がする。
こんなに歳をとっても、年下だという意識は消えないものなのだろうか。