ショコラ~愛することが出来ない女~
彼は苦笑すると私を厨房へと招いた。
ステンレス製の作業台の上でケーキの仕上げをする彼を、私は壁に寄りかかって見つめた。
相も変わらぬ器用な手つきで、クリームを絞る姿は変わっていない。
その繊細な手が欲しい。
若干悩ましい気分でそう思う。
「康子さん?」
「ちょうだい。食べたい」
「もうちょっと待って」
更に飾られていくチョコやイチゴがもどかしい。
隆二くんの手を掴んでその指先をケーキに突っ込む。
「うわっ」
その指にクリームを絡め取り、自分の唇を寄せて舐める。
うん。おいしい。