咲き舞う華は刻に散る


すると、泉羽は美桜里の前に膝をつく。



突然のことに美桜里は動揺した。



「美桜里様、桐生様の遺言を果たしに参りました」



「兄様の遺言…?」



「はい、桐生様は私めに貴女様を頼むと申されました。私は美桜里様を守りたく、此処に参りました」



泉羽は深く頭を下げた。



美桜里には忠実に主の言葉に従う彼女を追い払うことは出来なかった。



「土方…」



美桜里は横にいる土方を見上げた。



土方は自分に向けられる真っすぐな彼女の眼差しに頭を掻いた。



「分かった。コイツを屯所に住むことを許可してやる」



「良いのか?」



「どうせ、駄目って言っても、聞かねぇだろ」



美桜里は土方が許可してくれたことに驚いた。


泉羽は一度、敵対した者だ。



警戒心が強い彼が許してくれるとは思っていなかった。






< 397 / 615 >

この作品をシェア

pagetop