彼女の残したもの・・・
第2章 仲間
小中学校まで仲が良かった連中は、バラバラの高校に進学して、二十歳を過ぎた頃には、みんなそれぞれの道を歩み出すと、音信も途絶えていった。

坊ちゃん刈りだったユウは、この間久しぶりに電車で見かけたら、見事なリーゼントになっていた。
黒の“永ちゃん”のTシャツに白いズボン(あの頃はパンツなんて言わなかった)、同じ格好の連中とつるんでいた。

しょっちゅう学校帰りに買い食いをしていたブーちゃんこと、文也は、すっかり痩せて、背も高くなっていた。バッティングセンターで、彼女らしき女性を前に自慢気にホームランを連発して見せていた。

そして、男子が女子をいじめていると、必ず飛んできて、「お前らぶっとばす!」が決め台詞だった“ふじかわあやの”
彼女は、まるでピンキラのピンキーみたいな存在だった。
ふじかわあやの、多分、藤川綾乃だと思うけど、当時の僕らには、そんなことはどうでも良いことだった。


小学3年生の頃、ユウとブーちゃん、そして僕、シンゴはいつも放課後一緒だった。

僕は当時、成績も背も真ん中くらいで、まったくもって冴えない、男子だった。

学校からの帰り道、普通に歩けばどんなにゆっくり歩いても30分で帰れるのに、いつも2時間近くは掛った。

何をしてるかと言えば、途中の原っぱに捨ててあった鯉の死がいの口に“2B弾”を入れて爆破したり、土手に落ちていたくしゃくしゃの大人の本をひみつ基地に持ち帰って、みんなで回し読みをしたり、みんなで小銭を出し合って買ったチェリオを回し飲みして、その空きビンを的にパチンコで射的ごっこをしたり、とにかく毎日が忙しく、楽しかった。


ふじかわあやのが、僕らの仲間になったのは、学校の帰り、“ゆうきちさと”をいじめていた時のことだった。
ゆうきちさとは、体が僕らよりずっと大きく、勉強が良く出来た。
赤い縁のセルロイドのめがねをかけて背の高さを気にしてか、いつも猫背で歩いていた。
その日は夏休みに入る前の日で、僕はなぜか虫の居所が悪かった。
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