描かれた夏風
芸術の秋

盗作

 掃除用具入れにしては大きい、程度の小さな部屋だった。

 壁を埋め尽くす資料の山によって、二つの椅子以外に人が立てる場がない。

「先生、私の絵のところのプレート、作者名が野間野アスカ先輩になってるんです。何かの間違いですよね。訂正してもらえますか?」

「そのことなんだが……」

 ふう、と先生は大きなため息をこぼす。

「西口の絵は本当に上出来だった。だから、その……。俺は反対したんだが……代表に選ばせてもらった」

「代表に選んでいただいたことは、ありがとうございます。でも名前が」

 間違っているから、直してほしい。

 先生は私が言っていることを汲めないほど鈍くなかった。

 だから私の言うことを理解できないのは、理解しようとしていないからだ。

「――野間野アスカが最近調子が悪いのは知っているか?」

 また私の声を遮って、先生は無理やり話をそらした。

「え……まあ」

「なら話が早い。野間野アスカは将来有望な画家の卵だ。彼女の父親も立派な人で、寄付や講演会など、我が校に多大な貢献をしてくれている」

「は、はあ……」

 声に苛立ちがにじんでしまう。
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