描かれた夏風
「夜遅くまでバイトなんて大変ですね」

「バイトじゃなくて本職だよー。卒業してからも働く予定だしね」

 進路はもう決まっているということなのだろうか。

 しかし高校生を深夜まで働かせるなんて、一体どんな職場なんだろう。

 不思議に思っていたら、智先輩はさらに不思議なことを言った。

「メインの業種が暗殺だからねー。やっぱり闇に乗じた方が色々と都合がいいんだよ。目撃者も減らせるしね……」

「へ、へえ」

 ここは笑うところだろうか。

 冗談なのか本気なのかよくわからない冗談だ。

 智先輩は寝起きでまだ頭がぼんやりしているのかもしれない。

 私がリアクションに困っていたら、智先輩はスケッチブックを見て無邪気に目を輝かせた。

「これも友絵ちゃんの絵? 見せてもらっていいかなー」

「いいですけど、落書きばかりですよ」

 そう言いながらも、はいどうぞとスケッチブックを差し出す。

「落書きに見えないよー。目をつぶって左手で書いた友絵ちゃんの絵よりも、僕が真剣に描いた絵の方が下手な気がするな」

「あはは、そんなことないですよ」
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