描かれた夏風
 ――秋にある大きな芸術展。

 入賞すれば名が上がる、私たち芸術科の生徒にとっては大きなチャンス。

 けれど、そこに出品できるのは学校側から推薦された三作品だけだ。

 その代表の座をめぐって、我が芸術科では毎年熾烈な戦いが繰り広げられている。

「ありがとう。そういうことを素直に言えるなんてすごい。友絵ちゃんは欲がないわね」

「欲はないかもだけど、意欲は満タンです!」

「そう。誰かを蹴落としてでも有名になりたいとか……思わないの?」

 アスカ先輩が不思議そうに聞いてくるけれども、私にしてみればその質問こそが不思議だ。

「誰かを蹴落としてまで生み出した作品で、誰かを感動させることはできないと思います」

「あはは……そうね。一年生はまだ呑気でうらやましいわ。でも覚悟しておきなさいね、二年生になったら芸術科の生徒はみんな敵よ」

 そう言ってアスカ先輩は作業に戻っていった。校内のあちこちを見て回って絵の題材を探しているらしい。

 いつも余裕しゃくしゃくで悠然としていたアスカ先輩が、今は切羽詰まった顔をしていた。
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