描かれた夏風
 びっくりしたのは紛れもない事実だった。

 同じ学年だとはいえ、普通科と芸術科はクラスも校舎も離れている。

 性格も正反対の二人に、どんな接点があるというのだろう。

「親しくなんかないわよ。私、ああいう何考えているのか分からないタイプの人間は苦手なの」

(智先輩が、苦手)

 さっきの智先輩の変わりようを見ていたら、わからないでもないと思った。

 智先輩は考えていることが全く読めない人だ。

「勉強でも運動でも家事でも何でもできるなんて詐欺よね。あんなにボーっとしてるくせに」

 アスカ先輩はきっぱりと言い切った。

 私は頷きにくくて、曖昧に苦笑する。

 アスカ先輩の好き嫌いはとてもハッキリしているのだった。

(あれ?)

 私はかすかな引っかかりを覚える。

(今、家事って)

 私の聞き間違いじゃなければ、アスカ先輩は確かにそう言った。

「……先輩は、智先輩と一体どういう知り合いなんですか?」

「知り合いっていうか、中学の頃からかな。アイツがうちに住んでるの。それだけよ」

「同棲ですかっ?」

 私が驚きの声をあげると、アスカ先輩はコーヒーを文字通り吹き出した。
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