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毎年恒例

「日向、体調大丈夫?」

「えっ?うん」

「もうすぐ、いつもの季節だから」

「あっ…そっか」

いつもの季節…

それは、6月の中旬。

梅雨の季節で、ほぼ毎日雨が降り、毎日傘を

持ち歩く時期で。

長時間、雨が降り続ける。

あたしは、この季節が嫌いだ。

雨が嫌いだ。

雨を長時間見ているだけで、気分が悪くし、

吐き気がしてくる。

雨アレルギーなんてものはないらしいけど、

一種のアレルギーなんじゃないかって思って

いる。

病院で原因を調べたけど、先生にあたしが、

雨による天候の不安定さに弱いだけだって言

われて、薬を渡されて、長時間雨を見ること

を禁止されただけ。

治す方法、ないんでしょ?

アレルギーではないけど、長く雨を見ている

と、本当に気持ち悪くなるし、本当にひどい

時は、倒れてしまうこともあった。

そのため、雨の日はほとんど外には、出して

もらえないし、遠足や社会見学も、雨の日は

休まさせられた。

中学の修学旅行では、2日目に、旅行先で雨

が降り、お父さんが迎えに来た。

仕事をやめて、迎えに来させてしまったこと

を、今だって後悔している。

お母さんは、あたしが小さい頃に死んでしま

ったし、お父さんが大変なのはわかってるか

ら、迷惑はかけられないよ。

お兄ちゃんの省吾《しょうご》は、あたしと

6歳も離れていて、お兄ちゃんにも迷惑かけ

っぱなしだから…

今も、お兄ちゃんはあたしの学費のため、す

ごく一生懸命働いている。

だからあたしは、この季節は特に、体調管理

に気を使うんだ。

あたしはなぜか…6月の中旬。

いや、日付はもっと細かくわかってる。

毎年、6月19日辺りに、高熱で寝込む。

雨で…疲れちゃうらしい。

本当に、そのぐらいの時期に、一気に疲れが

爆発するように、毎年なってるみたいで。

しかも、その高熱は厄介で。

丸々1日は絶対に、目を覚まさなくなるらし

いんだ。

あたしはいつも、高熱のために覚えてないん

だけど、毎年そうらしいから。

だから、その時期は、お兄ちゃんはいつも以

上に、あたしに優しくしてくれる。

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