monoTone

1日彼氏

「…行くぞ」

「どこ行くの?」

「…秘密だ、秘密」

…京介、どこ行くのかな~?

今日は、京介との1日デートの日で、京介と

出掛ける前なのです♪

「…おい、行くぞ」

「うん」

京介に手を引っ張られ、手を繋いで、京介の

別荘を出た。

そのまま歩き続けて、来たのは、初めての場

所。

「あたし、ここ初めて来た~」

もう、ここに来て、1週間以上たったけど、

あたしが今まで行ってたのは、基本的に、遊

んだり、買い物をしたりするような場所。

ここは…木や山、海は近くになくて、川があ

る。

そう、自然に溢れた場所だった。

「…俺も、初めて来た」

「えっ?」

ずっと話さなかった、重い口を、やっとのこ

とで開いた京介が、言った。

「…俺の知り合いの墓なんだ、ここ」

「えっ…?」

いつの間にか、歩くのをやめた京介が、視線

を向けていたのは…たくさんのお墓。

「…一人で来るには、怖い。けど、大勢で来

る、勇気もねぇんだ」

低い声で、ポツリ、ポツリ…と話す京介。

「…だから、橘と。お前となら…来れる気が

した」

…そんな。

あたしの手には、繋がれた京介の手の震えが

伝わってきて、京介の不安が伝わってきてい

るようだった。

「悪ぃな。1日デートなのに、墓なんか連れ

てきて」

「墓“なんか”なんて言わないでよ。大切な

人のお墓でしょ?」

「…あぁ」

「京介の大切な人は、あたしにとっても、大

切な人だからさ」

…なんで、こんなことを言ったかなんて、あ

たしにもわからないし、知らない。

けど、京介が…辛そうだからかな?

とにかく、口から自然に、この言葉が出てき

たんだ。

「…そうだな」

そう言っても、行動するのは難しくて。

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