ルージュはキスのあとで





「女の子はね、キレイにすればするほど磨かれて光っていくものなのよ」

「……」

「それを初めから放棄するのは、もったいないじゃない」

「そ、それは……そうですけど」



 そのことは前にも彩乃に言われた。

 助けを求めたくて彩乃を見たのだけど、皆藤さんに同感とばかりに大きく頷いている。

 彩乃も皆藤さんの意見に同意らしい。
 と、いうことは援軍も期待できない状況のようだ。

 ウッ、と言葉に詰まりながらも口を開いた。

 このまま黙ったままで済むような相手じゃない。それだけは肌で感じた。


 渋々と、その理由を口にする。



「……ケバく……なるんですよ」

「は?」

「だから。私の顔立ちって結構濃いじゃないですか! だから化粧をすればするほどケバくなっていって醜いものが出来上がるというか……」



 ごにょごにょと語尾を濁し、俯く。
 この沈黙が痛いが、本当のことなのでしかたがない。

 そうなのだ。

 私だってそれなりに女の子をしていたときだってあったのだ。


 ただ、大失敗をしてしまったというだけ。

 もともとぶきっちょな私にとって、アイライナーを入れたりだなんて絶対に無理。

 つけまつげ? 絶対に無理。

 どれもこれも手がプルプル震えて痙攣しそうになるぐらいだもの。

 私には無理。


 そして、この顔立ちもよくない。

 あんまり化粧しすぎるとケバくなるってどういうことよ、と思わずおばあちゃんを恨む。


 うちの両親はどちらかといえばあっさり系な顔だち。



 それなのに、なぜに私はこんなに濃い顔なんだろう。

 なんでも死んでしまったおばあちゃんに良く似ているというのだ。

 所謂、隔世遺伝ってやつなんだろうけど……。

 思わずガックリと項垂れてしまいたくなる。そんな私に、皆藤さんはクスクスと笑った。






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