【完】最初で最後の恋
そして、手術の日――。
瞬の手は、微かに震えている――…。
「ハハっ、だせぇな、俺。手ぇ…震えてるでやんの!」
あたしはそっと瞬の手に自分の手を重ねる。
「ダサくないよ。瞬は、ダサくなんかない。誰だって、手術前は怖いよ。瞬、瞬は1人じゃないよ。おばさんや、美幸さん…それに、あたしだっている。ね?そう思えば…大丈夫でしょ??」
「…うん」
「瞬なら、大丈夫。きっと、成功する!」
「あぁ!奈央からのお守りもあるし、大丈夫だよな!」
「うん!あ、もう少しで手術だね…。最後に、これおまじないね」
あたしはそっと瞬の唇に自分の唇を重ねた。
――瞬の手術が成功しますように。
そう、願いを込めながら。
「サンキュ!奈央、行ってくる」
「行ってらっしゃいっ!」
瞬は、手術室へ入っていった――。

あたしができるのは、
ただ、待つことと。
成功を祈ることだけ。
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