【完】最初で最後の恋
**土曜日**


今日、お店は休業。
そして、あたしは今駅前にいる。
『明日、俺とデートしてくださいっ!10時に駅前で待ってます!』
彼とデートの約束をしたから。
その彼は、もちろん瞬じゃない。
「奈央さ――ん!」
「矢吹くん!」
…矢吹くんとの、デートだ。
「待たせてしまいましたか?」
「ううん。今来たばかりだよ」
「良かった!さ、行きましょ♪」
「どこに行くの?」
「嫌なことなんて、忘れられる場所です!」
そう言って彼はあたしの手を掴んだ。
あたしより年下なのに、手はちゃんとあたしより全然大きくて、男の人なんだなって思った…。

だけど、あたしが求めている手とは、違う。
あたしが求めているのは──……。
「奈央さん?」
っ、あたし…今なに考えてた?
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