【完】最初で最後の恋
「ここ?」
「はいっ♪」
そこは遊園地だった。
「行きましょう、奈央さん」
あたしの手をひく矢吹くん。
「うん!」
あたしは…
この温かい手を、離しちゃダメだ。
こんなあたしを、好きと言ってくれている彼を…
傷付けちゃダメだ。

あたしたちは歩き始めた。
人ごみの中を。
離れないように…
ぎゅっと手を握り締めながら……。


あたしの心の隅には……
まだ“彼”の存在が残ったままだった──……。


中途半端な気持ちが、一番人を傷付けるということをあたしは……
知らないでいた。
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