【完】最初で最後の恋
俺はわざと今きたと装うためにドアを大きな音で開けた。
「…矢吹」
「…奈央さん、ただの疲労だそうです。心配いらないみたいですよ」
瞬さんは、ホッとした表情を見せた。
「…そか。よかった。…奈央を、頼んだぞ」
「っ、あなたは、それでいいんですか!?俺がそうさせたのかもしれない!けど、そこにあなたの意志は…ありましたか?」
「…ちゃんと、あったよ。俺は…誰よりも奈央に幸せになってほしい。奈央の幸せを、願ってる。それができるのは…きっと、矢吹。お前だ。だから…奈央のこと、頼む」
あぁ、この人には、敵うはずない。
だって、彼は…自分よりも奈央さんの幸せを願っている。
彼女だけを、一途に想っている…。
「っ、俺も…奈央さんの幸せを願ってますから」
だから、俺は……
「そか。なら、安心だ。じゃぁな」

奈央さんと別れることを、決意したんだ。

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