薔薇城の若き当主。





「それでは失礼します」

その声と共に純金の扉に隠された部屋の中に一歩足を踏み入れたノアは、純白の美しい椅子に座っているジークに少し驚く。


それもそのはず、ジークは第3王子の時の格好(つまり正装)をしているからだ。
黒に近い灰色の髪を引き立てるかのように輝く黄金の冠は太陽を思わせ、漆黒のローブを纏う<マトウ>細身で白い身体は、聖夜の初雪を連想させる。
金緑色の瞳と同じ装飾品は生き生きと煌き、正装をより美しく際立たせている。


正装<ソレ>を着ているのが並みの容姿の人物なら似合わないだろうが、生憎<アイニク>ジークは不思議<ミステリアス>で上品な美貌の持ち主なため、正装が恐ろしい程よく似合っている。…思わず目を張るどに。


だがノアがその姿に見蕩れ<ミトレ>、目の前にいる人物に気がついた時間はそう長くなかった。




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