好きな子はツンデレ
この声に聞き覚えはある。



「ねぇ?海斗君?」

相手はニヤリとオレを見下ろして笑った。



「…政人(まさと)」


オレが「離せよ」ともがくと、政人は爆笑しながら首を解放した。


林 政人(はやし まさと)。


以前に静ちゃんには近付かない方が身のためだ、と教えてくれた張本人だ。



「お前、まだこりずに静様の尻追っかけてるわけ?」


オレはカチンとくる。


「静様とか言うなよ。お前も他の連中と一緒か?」


政人は「そーじゃねぇよ」と頭をかいた。



政人にだけは、オレが静ちゃんと図書室で行ったやり取りを教えてある。


あの教科書とノートの落書きを消したやり取りだ。


もちろん静ちゃんがどんなに良い子かということも語ってやった。



「だってお前、相手にされてねーのにさ諦めねぇんだもん」



政人はオレを哀れんだ。


イイヤツだけどこればかりはどーしようもない。


政人がどんなに静ちゃんは諦めろと言っても、それだけは素直に従えなかった。



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