桜の花が咲くころに
6年の月日
放課後

今日もまた
この場所に来てしまった。

[桜の木の下]に。


ここに来る時は、何かしら不満があってくるのだが、今日の理由は単純でありシビアなモノだった。



時間は朝のHRにさかのぼる。

いつものように担任が、1日の流れを言って終わりだと思っていた。


オレのその予感は外れた。

今日は、[転入生]というイベントがあった。


しかし、興味の無いオレは机に伏せていた。

担任の声だけが、耳に入ってくる。



「今日は、このクラスに新しい女の子が増えます。山田入りなさい。」

オレは顔を伏せたまま。

周りの男子は「カワイイ」と、盛り上がっている。

「じゃあ自己紹介しなさい。」

「山田 由衣です。 よろしくお願いします。」

オレは名前を聞いた瞬間、机に伏せていた顔をあげ、その場に立ち、声をあげた。

「ゆ、、、由衣なのか、、あの由衣なのか。」

オレの目には
ショートヘアーにすらっとしたスタイル、身長は160ちょっと。

オレの目にくるいはなかった。
あの子は、由衣は、6年前交わした「約束」の相手だった。

周りはざわつき
にやにやしている男子から声が飛ぶ。

「青野。カワイイからってアタックしてんじゃねえよ。」

オレは、じっと由衣の方を見つめていた。 由衣の口がひらく。


「すっすみません。 どちらさまでしょうか。 私2年前に事故で、記憶消えちゃって。 ほんとにすみません。」




彼女との会話は、それっきりだった。

この事がキッカケで、今この[桜の木の下]にいた。





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