桜の花が咲くころに
今から6年前。
由衣は、オレの住んでいる街、オレの通っている小学校に来た。
このころオレらは、小学5年生だった。
最初は、話しかけることなんてできやしなかった。
ある出来事が起きるまでは。
その出来事は、由衣が転入してきて1ヶ月経ったころだった。
休み時間
教室で泣き出した由衣。
原因は、クラスのいじめっ子3人によるいやがらせ。オレは昔からビビりで、誰かが止めるはずだ。と弱気になっていた。
しかし、止める者はいなかった。
気づいた時にはオレが、由衣を守っていた。その時言ったコトバは、今も忘れない。
「君は僕が守るからね。」
そのあとの事はあまり覚えていないが、由衣と話すようになったのはそれからだった。
時間の流れは早かった。
1年が、たった1ヶ月の様に感じた。
この1年間由衣とは、色んなとこへ行き、色んな事をした。
しかし、楽しい時間はいつまでも続かなかった。
小学6年生の春。
親の仕事が原因で、由衣がまた転校してしまう事を由衣から聞いた。
気づけば、オレは由衣の手を握りしめたまま走っていた。
あの[桜の木の下]に向かって。
今まで色々な所に行ったが、ここだけは、1度も連れていった事がなかった。
この時の事は6年経とうが、10年経とうが忘れないだろう。
「由衣ちゃん見て。桜、キレイでしょ。この場所とっておきなんだ。」
「わあキレイだね。」
「僕のこと、忘れないでね。」
「うん。ソラくんのコト大好きだから絶対に忘れない。絶対に戻ってくるから。だからソラくんも忘れないでね。」
「あ、、、、、あたりまえじゃん。由衣は僕が守るんだから。」
この時のオレは、涙をこらえきれず泣いていたに違いない。
「ソラくん。おおきくなったらけっこんしようね。」
そう言って由衣は、オレの頬にキスをし、1時間後にはオレの知らない所へと行ってしまった。
オレと由衣の間にできた[約束]は、ここから生まれたのだった。