愛を教えて ―番外編―
社長という肩書きを持つ人種は俗物に違いない――ソフィは最初そう思っていた。


前のオーナーが、しつこくソフィを口説こうとしたセクハラ社長だったことが大きな原因だ。

加えて、ソフィに婚前交渉の罪を犯させ、捨てた恋人の肩書きも社長だった。

無論、卓巳とは会社の規模に、豪華客船とイカダほどの差はあるが。



だが、卓巳は違った。

従業員のことを考え、資格取得に手当てまで出してくれた。


おまけに禁欲的で、どんな女性が訪れて誘惑しようとしても一切相手にしない。

聖人さながらのオーナーに、ソフィは信頼と尊敬を寄せていた。


昨年末、結婚して新婚旅行にロンドンを訪れると聞いたときは、ほんの少しだけ、ソフィはショックだった。

もちろん、恋とは別の思いではあったが……。



ジェイクのことは、もちろん知っていた。

明るく陽気で誰とでもすぐに仲よくなる。同僚の中には彼を誘った者もいるようだが、断わられたと落ち込んでいた。


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