愛を教えて ―番外編―
だが、そんな愛実の涙を見ると、


『ごめんなさい! もう言わない。僕、へっちゃらだから……ママは泣かないで!』


北斗は本当に母親思いのいい子なのだ。自分から人を傷つけて、平気でいられる子どもではない。

こんなときこそ父親と息子の間に入り、うまく家族を繋いでいかなくてダメなのに……。

それを考えると、忍の夜泣きがなくても愛実には眠ることができなかった。



「愛実……どうしたんだ? 何かあったのか?」

「え? あ、いえ、あの」


ハッと気がつくと、愛実は洗面所と脱衣所の間に立っていた。

忍を寝かせたあと、シャワーを浴びるという藤臣の着替えを用意しながら、ボーッとしていたらしい。


「ひょっとして、また、イジメに遭っているのか?」


藤臣の言葉に愛実はドキンとした。

ふたりが網走に行ってすぐの頃、愛実はひどいイジメに遭った。

週刊誌で『援助交際の挙句、妊娠。美馬氏が責任を取って結婚』といったことをたくさん書き立てられたせいだ。

その結果、大きなお腹で買い物に出るたび、愛実は矢面に立たされたのである。


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