愛を教えて ―番外編―
「結人は一緒に行きたくないの? 美月ちゃんもイヤ?」


万里子は長男と並んで座る美月にも声をかける。


「いいえ。美月は大樹くんが一緒でかまいません」


美月は天然パーマのふわふわの髪を揺らし、にっこりと笑って答えた。


この藤原美月は、結人と同じ歳で、息子たちにとってまたイトコにあたる。

美月の父親、藤原太一郎は卓巳の従弟。しかし、兄弟のいない卓巳にとって弟同然だ。太一郎の妻、奈那子は出産時の合併症が命取りとなり、闘病の末、美月が三歳のときに亡くなった。

今年の春、父親の太一郎が九州に転勤した。慣れない土地でふたり暮しは大変だろうと思い、美月を預かり、結人と同じ小学校に通わせている。太一郎は万里子の実家、千早物産に勤めていた。


「そうじゃなくて……。大地くんも一緒なんだ。たぶん、北斗くんも。だから……」


結人の言葉に大樹は口を尖らせる。


「ふたりと仲良くできるなら、孝司さんにお願いしてあげるわ。どう? ちゃんと約束できる?」

「……うん……えっと、はい」


大樹がうなずくのを見て、万里子は微笑んだ。


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