愛を教えて ―番外編―
――この先、悠はいやでも自分が産まれたときに父親は別の女性と結婚式を挙げていたことを知るだろう。それを不実と責められても、自分と母親を捨てたと言われても、反論はできない。すべて、事実なのだから……と。
 


「お兄ちゃんも一緒だったらよかったのになぁ……私も家にいればよかった」


父親より兄にべったりの長女、桜が荷物を抱え、ぶつぶつ文句を言っている。


「お兄ちゃんは勉強があるって言うんだから、しようがないでしょ?」

「本当に勉強かなぁ? お兄ちゃん、お腹の大きいママと一緒に歩くのがイヤだって言ってたよ」


桜の言葉に夏海はドキンとする。

たぶんそれが本心だろう。春に四人目の妊娠を告げた途端、悠は母親を避け始めた。父親に干渉されるのもイヤらしく、家族で外食をしようと誘っても『勉強がある』と言って留守番するようになった。

夏休み前にある個人懇談にもあまり来て欲しくないみたいだ。
 

真と一緒に走っていく桜を見送りながら、夏海は大きくため息をついた。


「気にしないほうがいい。そういう年頃なんだ。男の子はとくに、親から離れたくなる時期がある。悠は責任感があっていい子だから、何があっても本当に君から離れて行くことはないよ」


聡は身重の妻の手を取る。

ふたりは微笑みを交わして、子供たちの後を追い、幼稚園の中に入っていった。


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