愛を教えて ―番外編―
タオル地のショートパンツとキャミソールというラフな格好で、万里子は大きなベッドに転がっている。

一方、卓巳はパジャマの下だけ……背中をマッサージしてもらっていたので、上半身は裸だ。


「さて、奥さま。どの辺からお揉みしましょうか?」


作り声で言うと万里子はクスクスと笑った。


「ええ、そうね。じゃ、脚からお願いしていいかしら?」

「かしこまりました」


卓巳は笑い続ける万里子のふくらはぎに手を添えた。 



エコ・カーニバル終了後、仲良く家族で帰っていった美馬一家と同じく、卓巳も子供たちを連れて引き上げようとした。

しかし、急に仕事の呼び出しが入る。

残念そうな子供たちに向かって、


『ほらほら、そんな顔しないの。“お父さん、頑張れ”って言うんでしょ?』


万里子は声をかける。すると、すぐさま結人や大樹の顔が明るくなり、『お父さん、頑張ってきてね!』と手を振ってくれた。

心の底からホッとした卓巳だった。


仕事なので同行する、という宗を断り、卓巳はひとりで本社に向かう。本社に行けば担当者が出てきている。秘書がいなくてもできない仕事ではない。四人の子供を雪音ひとりに押し付けては、後々恨まれそうだ。

だが結局、宗は家族を家まで送り届けた後、卓巳に合流した。


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