愛を教えて ―番外編―
「なあ、万里子……雪音くんは怒ってなかったか?」


仕事なのだから当然、と言いたいが……。万里子は雪音と仲が良い。妻同士で結託されては、夫たちには敵うはずがない。


「雪音さんはそれほどわからずやじゃないわよ。あれでも宗さんにベタ惚れだもの。ブツブツ言ってても、いつだって言うとおりにしてるでしょう? 怒るわけないわ」


万里子はうつぶせになり、腕を顔の下で組んでいる。気持ちよさそうな顔をしながら、卓巳の質問に答えた。


「それは宗も同じだな。予定外と言いつつ、家にいて欲しくて避妊しないんだから」

「え? そうだったの?」


万里子は本気で驚いている。

宗は卓巳と違ってそれほど迂闊な男じゃない。妻には仕事に出て欲しくないが、万里子の役に立ちたいという雪音の気持ちを否定するのも嫌なのだ。

独り占めしたくて、意図的に子供を作っているふしがある。

だが、さすがに四人となると……。


「雪音さんも、幸仁くんを置いては出たくないみたいね。いっそ、離れを改装して住めばいいのに」

「それはそれで嫌なんだろうな。ああ見えて、プライドの高い男だから」


万里子にはそれだけで伝わったらしい。


「そうね……卓巳さんと宗さんて全然違うように見えて、とってもよく似てるわ。お互い一番頼りにしてるくせに、口には出さないところ、とか」


否定はできないが肯定もできず、卓巳は黙り込む。


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