愛を教えて ―番外編―
「おはようございます、おば様! 大樹くんはどこですか? 花嫁さんにご挨拶してもいいですか?」


廊下を元気一杯に駆けてきたのは宗三姉妹の長女・和音だ。子供のころから屈託がない素直な気質のまま成長している。

大樹と同じ学年なのだが、まだまだ高校生のような無邪気さを持っていた。


「和ちゃん、走っちゃダメ! あ、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。おはようございます。本日はおめでとうございます。母が先に伺っているはずなんですが……」


そんな和音を叱りながらきたのは、次女の藤音だった。

一卵性の双子なので見た目はそっくりなはずだが……。藤音は礼儀正しくそつのないタイプで、要領よく色々なことをこなしていた。


「おはようございます。ちょっと寒いけど、お天気もよくてよかったです。愛実様はどうですか? 玄関でメイドさんからお話を聞いたんですが」

「おはよう。今日は三人とも来てくれてありがとう。和音さん、大樹たちは裏の別館よ。花嫁さんのお仕度は離れだから、よかったらお手伝いに行ってあげてね。ええ、ありがたいことに、雪音さんは朝早くからきてくださってるの。大広間にいると思うから藤音さんも行ってみるといいわ。絢音さんは愛実さんと仲がいいから、ご機嫌を取ってやってくださる?」


最後に声をかけてきたのが高校二年生の三女・絢音。彼女は万里子のお願いにニッコリと微笑んだ。

三人姉妹は母親の雪音に面差しがよく似ていた。中身はそれぞれで個性があるが、この絢音は控えめで一番優しい性格をしていると思う。


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