愛を教えて ―番外編―
新婚当時のことが頭に浮かんだのか、万里子の頬は少し引き攣っている。


「プールサイドで押し倒すのはダメですよ! それに……キスもなしです」


万里子は監視カメラの存在を心配したのだろう。

卓巳はそれを察すると、胸を張って答えた。


「心配はいらないよ、万里子。プール内の監視カメラは全て停止させたからね」

「たっ、卓巳さん、そんなことやめてくださいっ! 何かしますって言ってるようなもんじゃないですかっ!?」


万里子の指摘に卓巳はハッとする。


「もうっ! 卓巳さんのバカッ!」

「ま、まってくれ、万里子。カメラは動かすように言ってくる。本当に泳ぐだけにするから……ね、万里子」


背中を向けた万里子を、必死で追いかける卓巳だった。


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