愛を教えて ―番外編―

後編

(本当に……卓巳さんはわたしにコレを着ろって言うのかしら?)


万里子は卓巳から渡された包みを開け、呆然と眺めていた。

カメラの件はともかく、少し泳いでみたいな、というのが万里子の本音だ。去年は一度も泳ぎに行けなかった。

マタニティスイミングの教室もあったのだが、それだと多くの人間に肌を見せることになる。それに、生徒は全員女性とは言え、コーチや関係者には男性もいるだろう。

かなりよくなったとはいえ、ライカーの仕打ちに万里子の症状は悪化した時期もあった。

卓巳に言えば、きっと教室そのものを貸し切りにしてくれるはずだ。だが、マンツーマンで指導を受けるようなものでもない。


しばらく悩んだが……。

やがて諦めたように、万里子は袋に入った水着を取り出し、身に着けた。



「卓巳さん……あの、わたし……こんなのは初めてで」


卓巳の好きなビキニスタイルだ。

問題は……なんと豹柄の紐ビキニなのである。

下半身はわずかな部分を隠すだけの布地しかなく、両サイドを紐で結ぶ。トップスは三角の布がふたつあるだけで……。


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