愛を教えて ―番外編―
【愛はふたりで学ぶモノ】

前編

「ねぇ、卓巳さん。明日、デート……しませんか?」


深夜、仕事から戻るなり、妻の万里子からそんなふうに誘われた。


「ああ……そうしたいのはヤマヤマなんだが。明日の日曜も朝から仕事で」

「明日の仕事は全部来週に回していただきました。宗さんにお願いして」


その言葉に卓巳は驚く。

どうりで、宗に明日の予定を確認したとき、


『明日の準備は整っております。ご安心ください』


などという言葉でかわされたはずだ。


ロンドンのハネムーンから戻って十日ほどが過ぎただろうか。

帰国しだい社長は解任。そういわれていたので、次の仕事と引っ越し先を探さなければならない。そう考えていたのが……。


会長で祖母の皐月が心筋梗塞で倒れた。卓巳には社長業だけでなく、会長の仕事までまわってきている。

もともと心臓の悪い皐月は、ここ一年ほど取締役会にも出てきてはいない。完全な名誉職だ。しかし、すべての権利は皐月が持っている。これまで、決裁は皐月の名前で行ってきたが……。

今回、皐月は白紙の委任状で、その権利を卓巳に譲っていた。


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