愛を教えて ―番外編―
「……どんどん、エスカレートしたりしません?」


見抜かれている――卓巳はそう思うと苦笑いだ。


そのとき、卓巳の唇にふわっと柔らかいものが触れた。甘やかな香りに包まれ、自然と目を閉じ、卓巳は雲の……いや、綿菓子の中に身体を委ねるような錯覚に陥る。


「大好きよ、卓巳さん。いい子で寝てくださいね」


万里子の唇が離れ、嬉しい言葉をかけられるが……。

卓巳は我慢できず、その唇を追いかけるようにキスを返してしまう。


「た、たくみさん……てば、もう」

「万里子、一緒にベッドに入ってくれるだろう?」

「ええ、もちろん。だって、私たちのベッドはひとつですもの」

「そのあとは?」

「卓巳さん、もう三時まわってるんですよ。ちゃんと寝てくださいっ!」


おねだりもやり過ぎると怒らせてしまいそうだ。

卓巳は降参して、万里子の添い寝で我慢したのだった。


< 72 / 283 >

この作品をシェア

pagetop