愛を教えて ―背徳の秘書―
ふたりとも大学を出て数年の二十四、五歳。年齢から考えて、宗が手を出すタイプには思えない。

もちろん……雪音の例もあるが。


花の贈り主が薫であるなら、自分を階段から落とそうとしたのも薫だろうか?

朝美は考え込むが、とても答えは出なかった。


そのとき、ドアがノックされひとりの女性が顔を出した。

朝美は驚いて目を見開く。なんとそれは噂の本人、総務の鈴本薫だったのである。



「じゃあ、この花に心当たりはないとおっしゃるの?」

「はい! 私じゃありません。私はこんな……病院の受付の方に聞いてみてください! お願いしますっ」


薫は絶対に花を持って来たりはしていない。朝美を階段から落としたのも自分ではない、と言い張った。

そして、男性社員と一緒に朝美自身が受付で確認したところ、「この女性じゃありませんでしたよ」と言われたのである。


薫の話によると……京佳は入社間もなくから宗と交際があったという。それなのに、いきなり今年に入って別れ話を切り出され、京佳はショックで薫に相談した、とのこと。


「はじめは相談を聞いてただけなんです。でも、中澤さんと結婚するという話を聞いたから、私に確かめて欲しいって」


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