愛を教えて ―背徳の秘書―
「社長! お願いします。信じてください。私は」

「ホテルはお前がよく使う所だろう? 傷跡は?」

「……あります。ですが」

「お前の息子が右に曲がっていて、一回目は必ず脱衣前に求めるのでスーツが皺になって困った……という発言に関して反論は?」

「……」

「弁護士を用意してやる。なんなら自分でやれ」


卓巳は吐き捨てるように言うと、宗に背を向けた。


確かに、京佳が薫と同じ内容を犯行の動機として供述すれば、宗は裁判の証言台に立つことになる。

それとは別に、宗が無関係を主張するのであれば、正式に申し立てる必要があった。卓巳のいう弁護士とはこの事態を想定してのことだろう。


もし裁判となれば、以前交際のあった受付嬢のことも言わなければならない。

彼女は新婚で、夫は藤原本社の海外事業部にいる。卓巳の立ち上げた英国の開発計画にも当初から加わっており、彼女は婚約者の海外出張中に宗との火遊びを楽しんだだけだった。

証拠はない。

だが、薫が京佳から聞いたという話は、そっくりそのまま受付嬢との情事だ。女同士というのは、時折、男が想像もできない会話をすると聞く。


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