愛を教えて ―背徳の秘書―
宗は昨夜、香織を抱いたのだ。

自分にはひと月以上声もかけないくせに……。

いや、香織から誘ったのに違いない。彼女の肌は満たされて艶めいている。だが、瞼は薄らと腫れていた。セックスのあと、宗のつれなさに泣いた口だろう。


バツイチの三十女に負けるわけにはいかない。


予定表を受け取り、颯爽と社長室に向かう朝美だった。



「……以上が本日の予定となります。全銀協の理事との会食が新たに組み込まれました。午後は少し忙しくなりますが、八時にはご自宅にお戻りいただけるかと」


約一ヶ月前、結婚五ヶ月目で社長夫人の“ご懐妊”が発表された。

いよいよ愛妻家の卓巳は、自宅で可能な仕事はすべて持ち帰るようになったのだ。

それに比例して、対外的な交渉は担当者に一任するようになった。それはそれで担当者の選任が大変だが、人材育成の上ではよい選択だと、社内外の見識者は褒めている。 


「それは顔出しが必要なのか?」

「もう二度もキャンセルしていますので、顔つなぎの上でもぜひお願いしたい、と。系列銀行からの要請です」

「わかった。仕方あるまい」


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