愛を教えて ―背徳の秘書―
「なんだ、知ってたのか?」


宗は雪音の言葉に悪びれる様子もなく答えた。


「中々別れてくれない女がいてね。泣かれて、時間がかかった。それだけだ」

「……嘘ばっかり」

「嘘じゃないよ。証明したいけど、社長室じゃ無理だ」


いくら社長夫妻がふたりの世界に入り込んでいるとはいえ、宗まで同じことはできないだろう。

そのとき、卓巳が声を上げる。



「それは駄目だ」

「そんな長時間ではないし……。卓巳さん、妊娠は病気じゃないのよ」


どうやら、万里子が中央区にある人気のケーキ屋に並ぶと言ったことに、卓巳が反対したらしい。

すると、会議の時間が空いたから、卓巳自身が買いに行くとまで言い出した。このままいくと、ケーキを全部買い占めて来いとなるのは時間の問題だ。


そのとき、雪音が口を開いた。


「私が行って参ります。お時間があるのなら、奥様はこちらで旦那様とお過ごしください」


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