愛を教えて ―背徳の秘書―
「悪いが……俺の父性本能は目覚めそうにない」

「もしものときは、責任は取りたくないってことかしら?」

「そう言ってしまえば、身もフタもないな」


宗が金の話をしようとしたそのとき……。


「今の社長がその言葉を聞いたら、あなた、どうなるかしら?」

「……」


それはかなり痛いところだった。


ロンドン本社で卓巳の秘書代わりを務めるジェイク・フォレスターの話を聞いたことがある。

卓巳によく似た実直な人間らしく、そこが社長夫妻のお気に入りだという。

二月に結婚したばかりの新婚だが、燃え上がって関係したその日にプロポーズしたという。宗にはとても真似できない、直球勝負の男であった。


妊娠は朝美の嘘に決まっているだろう。

だが万にひとつも事実で、中絶を勧めたことが知れると、今の立場から降ろされるのは間違いない。

そしてそれは、責任を取って結婚、という道を選んでも同じであった。


雪音と付き合いながら、他の女を妊娠させたから結婚します、などと言えば……。


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