愛を教えて ―背徳の秘書―
出会ったころ、香織は新入社員相手に必要以上の対抗心を燃やしていた。

結婚に興味はないと言いつつ、一年目でデキ婚、寿退社の後輩のことを酔った勢いで貶すこともあった。その後輩の相手が、香織と同期の男性社員だったせいかもしれないが……。

そんな香織をベッドに誘おうかというときだ。男であれば調子くらい合わせるだろう。


実際のところ、宗は雪音のような若い娘と寝たのは初めてだ。


『しかも、RX-7でなんて。私のことは乗せてもくれなかったくせに』

『ちょっと待て! 香織、本当に何が言いたいんだ?』

『写真が送られて来たのよ! あなたが夢中になってあのメイドを抱いてる写真が! 「あなたたちは、私の恋人を寝取っている」って手紙と一緒にね。恋人って中澤朝美なの? それとも他の女? 妊娠したから仕方なくじゃなかったの!?』


香織の質問攻めに、宗はタジタジだ。


『だから……君は中澤くんを』


……突き落としたのか? そう聞こうと思った瞬間だった。


携帯電話から聞こえた香織の言葉は。


『――死んでやる』


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