永遠花火
「枝恩?!おい!枝恩!!」
篤志の呼び止める声が聞こえたけど、振り返らずに走った…。途中、何度も転びそうになったけど、止まらずにここまで来た。
…ホント嫌になる…自分のこんなところ無くなっちゃえばいいのに…。どうして、あんな事言えたんだろう。
* * *
…明日、ちゃんと謝らないと……そう思いながら玄関まで歩いていくと…。
「枝恩!!良かった。まだ帰ってなかったんだな。」
…どうして?どうして、篤志がここにいるの…?下校時刻はとっくの昔に過ぎているのに…なんで…。
『篤志…なんで…。』
「ん?あぁ。サッカー部の練習がちょっと長引いたんだよ。ほら…帰るぞ?」
そう言っていつも通りにあたしと帰ろうとする篤志…。
やっぱり…優しすぎるよ…。
でも、その優しさに甘えてばかりじゃ…ダメだよね…。一歩踏み出さないと…。
『あのね…篤志……』
「枝恩、ごめんな。」
あたしの言葉が遮られる…。
「俺、確かにやりすぎだな……。枝恩にできることは枝恩がやったほうがいいよな…。ごめんな?」
『…っ。』
「それと、俺は別に枝恩の事嫌いじゃないし…むしろ、枝恩と居られて楽しいぞ?だから、枝恩は何も気使わなくていいんだからな。もうちょっと我がままでもいいかもな…。」
そう言って優しく頭をなでてくれる篤志…止めてよ…さっきやっと止まったのに、また涙が出てきそうじゃん。…ホントに優しすぎるよ…篤志は……。
『ありがとう…。それと、ゴメン。』
「フッ…気にしてない。さ…帰るぞ。」
『うん。』
――バーンッッ。――
『…花火…?』
「ん?あぁ…でも一発だけだから、近くで子供が遊んでるんだろ…?」
『そっかぁ…。篤志、帰ろっか…。』
「あぁ。そうだな。」

〜in 駅 〜
もうすぐ電車が来る……それにしても、長い1日だったなぁ…。
…今日だけ…少しだけ、この気持ちを篤志に伝えても…いいかな?
『…ねぇ…篤志…。』
「ん?何…?」
『あのね、あたし…篤志の事が…』
ガタンッ ガタンッ ガタンッ!!
電車の音であたしの声が遮られる。
「え?今、なんて言った…?」
『…何でも無いよ。さ、乗ろう。』
「あ、あぁ……。」
これでいい……これで…いいんだ…。
篤志には聞こえなくていい。篤志にそこまで甘えちゃダメだから…。
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