リクエストを基にした・【Kiss】シリーズ 『甘々』・13
いい加減、痺れを切らし、私は部屋から出た。

見合いの席として用意されたのは、会員制の高級老舗料亭。

桜の木がたくさん植えられていて、とても美しい庭園がある。

かく言う私が今日着ている着物も、お気に入りの桜柄だ。

せっかくの見合いだから、一番良い着物を着て、普段はしない化粧までしてきたと言うのに。

「それとも相手にはその気がなく、破談にするつもりかえ?」

ああ、そういうのもあるな。

一度の見合いで上手くいくのは珍しい方。

別に婚約者というワケでもないし、破談になったところで別に構わない。

「しかし顔も見せんとは、礼儀もしつけもなっとらんのう」

まあ私もこういう言葉遣いをいくら言われても直さないけれど、時と場合では使い分ける。

「…来ぬなら来ぬで連絡ぐらいしてこれば良いものを」

そしたら一人ででも、この料亭で食事をしたのに。

部屋は庭が見える所だし、庭園を見ながら美味い食事はしたい。
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