FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
そんな二人の会話を聞いていた蒼馬は、ニヤリと笑った。
「セイは沙都美ちゃんといる時が一番自然だよな。学校でもそうしてればいいのに」
「……そうかな」
とは言うものの、沙都美といる時が一番自然でいられることは、ちゃんと自覚していた。彼女と接している時が、一番心が落ち着いていられる。
(唯一の安らぎの場所)
沙都美は、今の聖にはそういう存在だった。
話しながら歩いているうちに、通学路の中では一番交通量の多い場所に出た。四車線ある道路には、法定速度を軽く超えたスピードで車が行き交っている。
信号待ちしていると、沙都美に袖口を引っ張られた。
「ねえ、あれお父さんじゃない?」
「え?」
歩道を30メートルばかり行ったところに、確かに父の姿があった。
「何してんのかな、こんなとこで」
そう言って父の元へ駆け出そうとした沙都美だが、ふと、その足を止めた。聖はハッとする。
父は一人の女性と一緒にいたのだ。あの女性は見たことがある。父の会社の部下で──浮気相手。
「お兄ちゃん、あの人知ってる?」
「……父さんの会社の人だよ。まだ仕事中なんだろ。邪魔になるから帰るぞ」
何故こんなところにいるんだ、と焦りながら、沙都美を促す。沙都美は父が浮気をしていることを知らない。それどころか、母親が暴力に苦しんでいることも知らない。知らないからこそ、沙都美は無垢でいられるのだ。
こんなところで気付かせるわけにはいかない。いつか家を出るその時まで、その心を守り通さなければならない。
「セイは沙都美ちゃんといる時が一番自然だよな。学校でもそうしてればいいのに」
「……そうかな」
とは言うものの、沙都美といる時が一番自然でいられることは、ちゃんと自覚していた。彼女と接している時が、一番心が落ち着いていられる。
(唯一の安らぎの場所)
沙都美は、今の聖にはそういう存在だった。
話しながら歩いているうちに、通学路の中では一番交通量の多い場所に出た。四車線ある道路には、法定速度を軽く超えたスピードで車が行き交っている。
信号待ちしていると、沙都美に袖口を引っ張られた。
「ねえ、あれお父さんじゃない?」
「え?」
歩道を30メートルばかり行ったところに、確かに父の姿があった。
「何してんのかな、こんなとこで」
そう言って父の元へ駆け出そうとした沙都美だが、ふと、その足を止めた。聖はハッとする。
父は一人の女性と一緒にいたのだ。あの女性は見たことがある。父の会社の部下で──浮気相手。
「お兄ちゃん、あの人知ってる?」
「……父さんの会社の人だよ。まだ仕事中なんだろ。邪魔になるから帰るぞ」
何故こんなところにいるんだ、と焦りながら、沙都美を促す。沙都美は父が浮気をしていることを知らない。それどころか、母親が暴力に苦しんでいることも知らない。知らないからこそ、沙都美は無垢でいられるのだ。
こんなところで気付かせるわけにはいかない。いつか家を出るその時まで、その心を守り通さなければならない。