FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1

「あ、お兄ちゃーん」
 
放課後、蒼馬と帰り道を歩いていると、沙都美が追いかけてきた。

「今日遅刻しなかった?」

「もちろん、間に合ったよ」

「さっすが、毎日走ってると足も速くなるんだねー」
 
いたずらっぽく笑う沙都美に少々ムッとしつつ、軽く笑ってその額を小突いた。

「今日も起こすの大変だった?」
 
と、蒼馬。

「うん、もう大変! 何回呼んでも起きないし。あ、そういえば、今日は怖い夢でも見たらしくて叫んでたよね」

「叫ぶくらいの怖い夢? 一体どんな夢だよ」

「ああ……」
 
今朝の夢を思い返した瞬間、蒼馬とあの血だらけの青年の姿が重なった。ハッとして立ち止まる。

「どうした?」

「あ? いや、何でもない……」
 
そう言って歩き出すが、全身の血の気が引いて、うまく足が動かない。五月の良く晴れた空からは、暑いくらいの日差しが降り注いでいるというのに、心も体も凍えてしまっている。
 
あれはただの夢のはずだ。何故ここまで恐怖に怯えなければならないのだ……。


「……何だかお兄ちゃん、顔色悪いよ? 気持ち悪いの?」
 
心配そうに沙都美が訊く。聖は軽く笑って、沙都美の頭を叩いた。

「何でもないよ。それより、沙都美こそどこか悪いんじゃないのか?」

「えっ? ううん……」

「少し太ったみたいだけど」

「……おにーちゃん!」
 
ふくれっ面で沙都美は聖を睨みつける。

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