平凡太~ヘイボンタ~の恋
詞音ちゃんが…。


一華先輩はちゃんと救急車を呼べるだろうか。


これまでに聞いた事のない不安でいっぱいの一華先輩の声に、胸が騒ぐ。


じっとなんてしてられない。


ボクはタクシーをつかまえて、前に一華先輩が言っていた住所を運転手に告げた。


「急いでください」


いちいち止まる赤信号がウザくてたまらない。


ノロノロと走る車に苛立ちを感じながら向かう車内で再びケータイが鳴ったのは、一華先輩ん家のアパート近くに来てからだった。


「もしもし!」


『平太くん、病院、東堂総合病院なのっ!』


「すぐ向かいます」


それだけ言ってタクシーは方向転換、東堂病院へ向かった。


着いた夜の病院、救急窓口で


「桜庭 詞音の親戚の者なんですが」


と、言いつくろって処置室まで案内された。


処置室前の椅子には、祈るように胸に手を当てた一華先輩が座っていた。
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