平凡太~ヘイボンタ~の恋
月曜。


ボクは昨日、詞音ちゃんが寝ついてからアパートに帰ったから、一華先輩と出勤は別々。


でも会社で顔を合わせると、なんだかお互い気恥ずかしかった。


「オハヨ、平太くん」


「おはようございます」


「コーヒー、どうぞ」


「ども」


いつもの朝の給湯室。


詞音ちゃんがいないせいかな…話題を探せない。


「今朝は熱、下がったの」


「そっか。良かったですね」


「うん」


それっきりの会話が。


ボクの胸を疼かせる。


だって、一華先輩を知ったボク、詞音ちゃんの代理パパのボク。


“家族”


そんな形ができた気がして、胸の奥がかゆい。


でも、それはいつまでなんだろう。


『友詞』がいらなくなって、一華先輩に好きな人ができたら、ボクは…?


締め付けられる想い。


反して、それでもいいのかも、と。


一華先輩が『友詞』を忘れて新しい人生を切り開けるのなら、と。


いつか『友詞』の影から解き放たれる日が来るのなら、それが一華先輩と詞音ちゃんの幸せなら。


そんな日が来たら、ボクは潔く身を引くのがいいんだ、と。


願わずにはいられない。
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