悪魔のようなアナタ ~with.Akito~




晃人は涼しげな瞳を細め、余裕の笑みで両親を見る。

その貫禄すら漂う表情に父は一瞬面食らったようだったが、すぐに気を取り直して口を開いた。


「そ、そうだったのか。知らなかった」

「先にご挨拶するべきでしたね。申し訳ありません」

「いやいや、晃人君ならわしも安心だ。昔から君には灯里の面倒をよく見てもらった。君になら灯里を任せられる」


父の言葉に灯里はぽかんと口を開けた。

娘が外泊したというのに『安心だ』とは……。

その信頼度に思わず唖然とする灯里の横で、晃人は優雅な所作で一礼した。


「それでは失礼いたします」


晃人は車に乗り、扉を閉めてエンジンをかけた。

もう一度両親の方に向かって軽く一礼した後、ゆっくりと車を発進させる。

道の向こうに遠ざかっていくジーマを、灯里と両親はぼーっと見つめていた……。


< 39 / 171 >

この作品をシェア

pagetop