君に、この声を。



「合唱が嫌になったとか?」

「いや。合唱は大好きなんですけど……」



崎田先生の言葉に、あわてて首を振った。


でも、それ以上の言葉が出てこなかった。



「とにかく、もう合唱団はやめるんで。今までありがとうございました」



崎田先生はまだ納得していないみたいだったけど、私は軽く会釈をして職員室を出た。



これ以上、崎田先生とワンツーマンで話していたら、本音が出そうだった。

下手したら、涙も出ていたかもしれない。



職員室で泣くのは、卒業するときか、受験で第一志望に落ちたときだけって決めていたから、それだけは嫌だった。


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