君に、この声を。
今年の課題曲は「証(あかし)」。
伴奏はサビのところで16分音符がたくさん並んで私なんかだとテンポがどうしても速くなってしまう。
それに、今年はピアノソロの部分もある。
要するに、練習のしどころ満載。
「でも本番は8月だし――――」
「そうやって余裕ぶってる奴ほど本番でミスるんだよ」
「ミスりたくなかったら今練習しろ」と最後の止めをさす奏太。
何も言い返せない私は、いすの上でへなへなと力尽きた。
そんな私を見て、奏太はちらっと時計を眺めた。
「まぁ、がんばったから5分休憩な」
その一言で、私は背をしゃきっと伸ばした。
それから、顔に薔薇色の笑顔が広がる。
「ありがと! 奏太!」
広い部屋に、私と怜の声がきれいにハモって響き渡った。