君に、この声を。
「ちょっと、怜。あんたは黙ってなさいよ」
「もう無理無理。俺に1時間じっとしてろって言う方が間違ってんの」
「そんなんで卒業式どうすんのよっ」
「その時はその時だって」
「もうっ」と小さくため息を漏らす朱莉。
「奏太ぁ。私もギブーっ」
「はぁ!? 智那に休憩する暇はねぇよ」
「いやーっ」
奏太にジロッと睨まれ、私は体を後ろに倒した。
このピアノいすが、背もたれのあるいすでよかった。
「だって、さっきから同じところしか弾いてないよ?そろそろ前に進みた――」
「智那。この伴奏でコンクール挑む気か?」
鋭い奏太の声に遮られわ私はウッと苦い顔をした。