君に、この声を。



「智那(ちな)」



私に最初に気づいた朱莉(あかり)は、そこにいたみんなの神経を私に集中させた。


みんなの視線が私にさだまった。



「城山智那ぁ」



崎田先生があきれたように私をフルネームで呼んだ。



「すみませーん。寝坊しちゃって」



私がそう言うと、いろんなところからクスクスと笑い声があがった。


それもそのはず。


「智那ぁ。何回寝坊したら起きれるんだぁー? 先週もそうだったろー」



テノールの前列から、人一倍大きな声が聞こえ、そのせいでまた笑いが起こった。



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