好きになっても、いいですか?
「ちょっと、隣へいいですか?」
「あ、はい。時間かかりますか?」
「あ、いえ。すぐに終わるかと……」
終始控えめな麻子の態度に、純一は気になって仕方がない。
そんな純一の心までは気付かずに、敦志は純一に一言断り、2人で秘書室へと籠ってしまった。
(なんなんだ、一体)
純一がやり場のない小さな苛立ちを椅子にぶつけると、麻子の言ったとおり、すぐに2人は戻ってきた。
「ほんと、すみません……」
「いえいえ」
純一にすれば、なにがなんやらだ。
しかしそんなことを堂々と聞ける性格ではない。
むしろ自分の中で、なぜそんなことを気にしなければならないのだ、と、戒めるくらいだ。
そしてそんな純一に、やっと気が付いたのはやはり敦志だった。