好きになっても、いいですか?


「ジムにでも通おうかな……」
「それ以上強くなってどうするんだ」


完全に一人だと思って呟いた独り言を、純一に聞きとられて麻子は珍しく慌ててしまう。
来客があったが、少しの時間とは聞いていたために、こんなに早くに戻ってくるとは麻子も思わず、少しのんびりと社長室の資料整理をしていた。


「……強くなって、損はないですから」
「男を泣かせる気か」
「その程度で泣く男は、こっちから願い下げです」
「それで、残る男がいればいいけどな」


売り言葉に買い言葉。
最近では日常茶飯事になりつつある。

途中で合流した敦志も、苦笑しながら2人のやりとりを黙って見ているだけだ。


「あ、芹沢さん。そろそろお昼、いいですよ」


敦志が時計を確認して麻子にそういうと、麻子はささっとやり残した作業を終えて休憩に入っていった。


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